以前からWeb業界で話題になっていた「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律案」、いわゆる有害サイト規制法がとうとう成立してしまいました。
有害サイト規制法は、殺人や自殺、猥褻行為などの原因になりうるWebサイトを青少年に閲覧できないようにする、要するに企業にはフィルタリングを義務付け、個人には積極的な自重を求める法律ということになります。
果たしてWeb業界にはどのような影響があるのでしょうか。
この法律では有害と思われるWebサイトを企業が積極的に規制しなければいけない、ということで、PCにフィルタリングソフトをプレインストールし、しかもデフォルトでそのソフトの機能をオンにしておくことが義務付けられるそうです。
つまり、PCを購入した時点で既に閲覧できないWebサイトがあるということになります。
このフィルタリングソフトがどういうものになるかは今のところわかりませんが、おそらくブラウザに関連するものが主になるのではないかと思います。
プロキシ単位で規制してもいくらでも抜け穴があり、海外の回線を使えば規制などできないので、どうしてもローカル側での規制になってしまうのではと。
IEやFirefoxなどのプラグインをインストールするのが手っ取り早いですが、アンインストールできてしまうためこれも無意味です。
そうなるとフィルタリング機能をあらかじめ搭載したブラウザにする必要がありますが、ブラウザのほとんどは海外製で、日本のものだけフィルタリング付きのものを開発するなどやりたくないはずです。
そんな機能を搭載したところで、別のブラウザで見られたり、Webサイトをまるごとダウンロードしてオフラインで見られたりするとどうしようもありません。
フィルタリングの推進には専門の機関が設立されるようですが、民間企業がだれでも参入でき、国の支援が貰える可能性があるということで天下り先にもってこいな感じもします。
このような体制で本当に法律として成立するのか疑問に思いますが。
具体的にフィルタリングの対象となるWebサイトとはどんなものでしょうか。
自民党の出した法案によると以下のようなWebサイトを指すそうです。
- 人の性交等の行為又は人の性器等の卑わいな描写その他の性欲を興奮させ又は刺激する内容の情報であって、青少年に対し性に関する価値観の形成に著しく悪影響を及ぼすもの
- 殺人、傷害、暴行、処刑等の場面の陰惨な描写その他の残虐な行為に関する内容の情報であって、青少年に対し著しく残虐性を助長するもの
- 犯罪若しくは刑罰法令に触れる行為、自殺又は売春の実行の唆し、犯罪の実行の請負、犯罪等の手段の具体的な描写その他の犯罪等に関する内容の情報であって、青少年に対し著しく犯罪等を誘発するもの
- 麻薬等の薬物の濫用、自傷行為その他の自らの心身の健康を害する行為に関する内容の情報であって、青少年に対し著しくこれらの行為を誘発するもの
- 特定の青少年に対するいじめに当たる情報であって、当該青少年に著しい心理的外傷を与えるおそれがあるもの
- 家出をし、又はしようとする青少年に向けられた情報であって、青少年の非行又は児童買春等の犯罪を著しく誘発するもの
なかなか漠然としていますが、「残虐」「わいせつ」の2点が主のようですね。
この影響を受けそうなWebサイトとしては以下のようなものが挙げられるのではないでしょうか。
- 2ちゃんねる
政府・マスコミその他、諸悪の根源だと思っている方もいるのでは。 - Youtube
あれもこれも動画で見られるのは青少年への影響は大きいでしょう。 - mixi
閉じた空間では視野が狭くなり、依存度が高くなります。 - モバゲータウン
若年層がターゲットなため最も対応が迫られるでしょう。 - 各種ブログサービス
手軽に自由に誰でも情報が流せる点では危険視される可能性があります。 - 自主設置型掲示板
いわゆる「ネットいじめ」を助長させる可能性があります。
もしこれらのWebサイトが規制されると、日本のインターネットはそれはそれは貧相なものになり、その後のネット社会の発展も先細るでしょう。
例えばもし2ちゃんねるが有害サイト指定を受けたら、それを上記でリンクまで張って紹介したこのブログですら有害ということになってしまいますね。
「情報」が存在意義であるインターネットから情報を取るようなことはナンセンスだし、秒単位で生まれては消える情報を特定して規制するようなことが実現できるとは思えません。
だけど、もしどうにかして規制するとしたら・・・
【メタタグを入れる】
日本独自のメタタグを規定し、有害と思われるサイトの管理者に自主的に入れさせる。
それをもとにブラウザで警告・閲覧停止。
【ネットは20歳から】
思い切って年齢制限。
【ネット基礎知識の授業】
小中学校で教科書と授業を設ける。ネットの被害事例に重点を置き、ついでに著作権も。
【IDカードが必要】
住基カードのようなもので生年月日を照合しPC操作規制。
・・・どれも現実的ではないですね。
でも、学校で教える動きは一部ではあるものの、なぜ全国的にやらないのかが疑問です。
ここまでいくつか考えてみましたが、僕自身はこの部分が論点ではないと思っています。
青少年が起こす犯罪の原因が本当にネットにあるのかどうか、それをちゃんと考察・研究した上での法律とは思えないです。
凶悪な犯罪を犯した犯人が、「よくネットをやっていた」ということで「原因がネットにある」と安易に決め付けられることが多々あり、マスコミもそれを煽ります。
例えば先日の秋葉原の大量殺人事件では、「ネット掲示板に依存していた」ということでネットの危険性が取り沙汰されています。
しかしこの犯人はネットをはじめるより前から自分に強いコンプレックスを持っており(それを増幅した要因はネットにあるかもしれませんが)、それが日々鬱積したところで、事件数日前に派遣会社からクビを言い渡され、人生のなにもかもに嫌気がさしたのが原因のようです。
ネットをよくやる人間は世界中に何億といます。
ネットが凶悪犯を生む原因なら、世界中が犯罪者で溢れ大変なことになっているはずです。
要するに「人を殺すほどに自分を見失う」という性格が作られてしまう境遇や環境が原因なのであり、その人格形成のコアはネットなどではないはずです。
この法律は「凶悪犯はみんな空気を吸ってるから、空気を規制しろ」と言っているようなものであり、青少年の犯罪防止に役立つとはとても思えません。
しかし、これだけ世界中に有象無象のWebサイトがあるなか、犯罪を助長しそうな、害がありそうなサイトが存在するのも事実です。
Webの仕事に従事する者として何ができるか、今後も考えていく必要はありますね。